寺社探訪

寺社探訪とコラム

「人形供養祭」

先日とある葬儀社が主催する人形供養祭のお手伝いに行ってきました。人形供養は葬儀社が主催したり、神社や寺院で行われていたりします。今回は主催者側の立場から、人形供養祭を解説してみます。

(※ 写真はフリー素材)

人形を供養する訳

私は若い頃和歌山に住んでいたことがあるのですが、当時から淡嶋神社は人形で埋もれていました。日本古来からの信仰は、あらゆるものに精霊が宿るアニミズムと言われるものです。特に人形は人の形と書きますので、人間同様に扱ってきたと思われます。海外でも人形が心や意思を持って動くホラー映画が創られるので、人形を人間同様に扱うのは世界共通なのかも知れません。日本の神道では現在でも人間の形をした形代を使った祈祷を用いています。6月末の風物詩、夏越の大祓でも登場します。大抵は川や海など水に流すことが多いですね。

 

人形供養祭をする訳

さて、葬儀社が人形供養をするのは、地域貢献や顧客サービス目的がほとんどで、葬儀社の宣伝のためにやっていると思われます。神社や寺院でも似たような目的だと思います。では、人形供養を利用する側はどうかと言うと、大切にしてきた人形をゴミとして捨てるには忍びないとか、粗末に扱って祟られるのが怖いとか、そのような霊魂的なものを畏怖する気持ちですよね。人物写真や肖像画も、同様な気がします。

昔の葬儀は「待ちの仕事」と言われていて、どこかでどなたかが亡くなって、我が社の電話が鳴るのを待っていました。葬儀は縁起が悪いので営業などできないというのが定説でした。現在では地域イベントや事前説明会などを積極的に行い、互助会よりも簡単な有料会員制によって、予約者を囲う時代になりました。葬儀は予約を受けていても、いつその方が亡くなるかはわかりません。その間に他社に心変わりをされては困るので、囲い込んだ会員様向けの様々なサービスが行われます。例えばお盆飾りの特売会や、有名僧侶による講演会や税理士による相続講座、名産品の特売やら寺社巡りツアーなど、各社知恵を絞って様々なサービスを提供しています。人形供養も、そんなサービスの1つとして行われています。

 

人形供養祭の準備

供養の仕方は葬儀のように祭壇を設営して、その周りに人形を並べて置きます。私がかつて参加した複数の葬儀社の人形供養は、どれもすごい量の人形が集まっていました。大量消費社会ではありますが、人形など数日や数ヶ月では捨てないものです。並べていても、長い間大切にされたことが伺えるものがほとんどです。特に雛人形などの日本人形は、変色したヒノキの木箱に入った年代物で、かなりの価値がありそうなものも見られます。人形の引き取りはダンボール箱単位で、有料で行っている場合がほとんどです。人形を並べるコツとしては、種類や大きさを揃えることにこだわり過ぎると終わらないので、ある程度妥協しながら限られたスペースになるべく多くの人形を飾ることです。マスク・エプロン・軍手は必須です。長年倉庫に眠っていた人形も多いので、素手で扱うと手が痒くなります。

 

人形供養祭の当日

人形供養祭の当日は、僧侶や神官を招いて儀式が行われるのですが、予約制になるほど参加者が集まる場合もあれば、全く参列者が来ない人形供養祭もあります。これは他のイベントとの組み合わせにもよります。人形供養単体のイベントだと、ほぼ参列者がいないかなぁと思われます。祟られないように供養したいけど、儀式に立ち会うほどではないのでしょう。「お任せするのでよろしく供養してよ」という感じですね。逆に家族連れで参加している方を見ると、これは良い教育になるだろうなぁと思います。自分の人形が飾られている場所を探して、大切に供養されていることを確認して、感謝の気持ちを伝えるという経験はきっと心の成長にプラスになるし、なかなか他のイベントでは体験できないのではないかと思われます。供養済みの人形がどうなるのかというと、回収業者によって引き取られます。そこから先はゴミと同じ扱いですが、しっかり供養されて、宿っていた魂は抜けて神仏となっているので問題ないという考えです。もしかしたらお焚き上げ的な行事をするところもあるかも知れません。かつて友人が、幼い頃に叔父さんからもらったぬいぐるみを、20年以上も大事にしているのだと見せてくれたことがあります。その時閃いた私は、幼かった姪っ子に小さなウサギのぬいぐるみをプレゼントしました。今年二十歳を迎えた姪っ子に、そのぬいぐるみの行く末を、聞……かないでおきましょう。

 

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