寺社探訪

寺社探訪とコラム

「共病文庫 ⑨」

「生・老・病・死」は「四苦」と言って、仏教では人生を代表する苦しみとされています。

 

桜が咲く前に入院し、手術を受けました。新人看護師さんたちが社会人の第一歩を踏み出す場面を垣間見て、自分も頑張らなくてはとエネルギーを貰いました。

 

退院予定

入院していると、昼間もベッドの上で暇な時間というのが多いので、ウトウトして眠ってしまうことがあります。野生動物は体が傷つくとじっとしていると聞きますが、ヒトもじっとして眠ることを体が求めるのか、豪快に昼寝しても、夜になったらまた眠れます。日常生活では昼夜逆転しやすい私ですが、今回の入院では昼寝の度合いに関係なく夜も眠って朝起きています。ヒトも生物だと思える瞬間でした。

術後は血液検査をしたり、CT検査をしたりしていますが、術後11日目、財前先生から手術の評価と現況を伺いました。術後の合併症が出たために、退院予定が遅れている状況です。合併症の推移を警戒しつつ、最終検査日と退院予定日が決まりました。昨今では退院が早くなっている傾向があって、概ねOKなら退院してしまうことが多いようです。私はフリーランスなので、万全の状態でなければ仕事に出られませんから、退院してもしばらくは自宅療養になります。自分の仕事がどうなるのか難しい立場ですが、それでもフリーランス仲間たちは色々と気遣ってくれています。見舞いに行きますとか、迎えに行きますと連絡が来ました。

 

看護師

アイドルのような容姿で、全く区別がつかなかった看護師さんたちも、ようやく一人ひとりの顔や名前や個性が理解できてきました。技術的なことはもちろんですが、精神的に支えて頂いた場面が多かったです。看護師さんには感謝の気持ちで一杯です。体拭きや洗髪、着替え、下のお世話など、家族でなければできないようなことも、嫌な顔ひとつしないでやってくれました。特に印象深いのは、手術の翌日に立つ練習をして気絶してしまい、練習が中止になった時のこと。1日でも早く回復するために頑張ろうと燃えていたので、できなかった自分に気持ちが落ち込んで沈んでいると、まだ貧血で感覚のおかしな腕をさすって、「大丈夫ですから」と励ましてくれた看護師さんには本当に救われました。

手術直後は様々な管で繋がれていた私も、術後10日目に最後のドレーンが抜けて、11日目に点滴の針を外しました。まだ、背筋を伸ばすとお腹が痛いですが、どんとん動いていくことで馴染んでいくと思います。安定してきて元気になってくると、退屈な時間が増えていきます。退院が迫ってきている証拠ですね。私の病気はこれで根治とはいかず、その後の経過を見守る必要があるで、結局は定期的に検査や診断を受け続けることになります。また、手術をして臓器摘出したことで起こる新たな症状にも、対処療法が必要になります。退院しても、すっきりさっぱりとはならないのが残念ですが、この手術で健康寿命が伸びたと信じたいと思います。

 

退院

ついに退院の日がやってきました。結局23日間の入院でした。まだお腹を伸ばすと痛いですし、重いものを持ったり、跳んだり走ったりはしていません。手術跡もまだ痛々しく、日常生活にも制約がありますが、とにかく退院です。入院すると筋力が衰えますが、呼吸も衰えてしまいます。体力も無くなって、いつも退院後は帰宅するのが大変で、誰かにお迎えを頼めば良かったと後悔していました。今回は仲間が迎えに来てくれると言っていたのですが、気の迷いで電車とタクシーで帰ることにしました。ずーっと病棟内に監禁状態だったので、とにかく外を歩きたかったのです。

今回は大手術で初体験のことが多かったですが、何とか乗り越えられたのは、有能な看護師さんたちによるところが大きいです。退院して家に帰るとひとりなので、名残惜しい気持ちにもなります。名残惜しいといえば、毎回入院の度に思いますが、パラマウントベッドが欲しいです。いつもは、あまり使うと欲しくなるから、入院中もパラマウントベッドの機能を利用しなかったのですが、今回はフル活用しました。腹筋を使わなくても体を起こせたり、自由自在に角度変えて楽な姿勢を追求したりと、パラマウントベッドのおかげで、回復期の辛さが軽減されたと思います。ちなみに購入すると15〜30万円くらいです。

電車+タクシーでほとんど歩かず、ゆっくり1時間かけて自宅にたどり着きました。それでも乗り換えで休憩するほど疲れました。8時間超の手術を受け、私の人生がどう変わったのか? これからその新しい人生を歩んでいきたいと思います。

 

( ※ 写真はフリー素材です)