寺社探訪

寺社探訪とコラム

「共病文庫 ⑧ 」

「生・老・病・死」は「四苦」と言って、仏教では人生を代表する苦しみとされています。

 

手術後、様々な苦労をすることになりますが、様々の中身をご照会できればと思います。

 

やったー

ICU2日目の夜に、里見先生かやってきました。私を見るなり「やったー!」とガッツポーズです。「良かった良かった。やったー」と喜んでくれました。里見先生が導いた治療を受け、私はどうなったのか? という評価はもう少し先になるそうですが、「これからも頑張りましょう」と先生は笑顔で去っていきました。

ICU2度目の夜は腹痛との戦いでした。高熱が引かないとのことで、氷枕を両脇に挟みました。全く動けないので、看護師さんがやってくれることが全てです。とにかくお腹が痛くて、痛み止めが効いている間だけ眠れます。看護師さんがなんとか痛みを取ろうと頑張ってくれました。術後二日目の目標は、とにかく昨日できなかった立ち上がることです。気絶をしないように、朝のうちから体を起こして過ごすことにしました。私は何でも恐る恐るですけど、病院の方々は超積極的でスパルタです。

まずは車椅子でトイレに移動に挑戦しました。フラつかないようにゆっくり気合を入れてやれば、うまくできました。その調子で歩行器もやりましょうと言われ、もの凄くゆっくりですが自分で歩くことが叶いました、これで一般病棟への移動が決定しました。至れり尽くせりのICUから一気に環境が変わりますが、そもそも私は差額ベット代無しの貧民なので、それで良いのです。最終的には点滴棒に捕まって移動するところまでできました。お腹を動かすために整腸剤やら漢方薬を飲むのですが、私は手術前の下剤が効きすぎていて、整腸剤など無くても、お腹はグルグル音を立てています。この段階で自分でなんとかトイレに行けて良かったです。

 

三歩進んで二歩下がる

一般病棟に移ってからは、術後3日目とは思えぬスパルタに着いていく1日となりました。尿道カテーテルを抜いて、首に縫い付けてある点滴も抜きます。心電図も゙外して、背中に常時流れている痛み止めも外しました。動脈からの点滴も抜き、足のマッサージ機も外して、酸素マスクもやめました。身の回りがスッキリしたので、頭を洗ってもらい、ヒゲも剃りました。

痛み止めでコントロールされているので、動くのは動けるのですが、とにかくナマケモノのようにゆっくりで、可動域も狭いです。それでも3日目はこんなに進んで大丈夫か? と思う程、進みました。すると、夜になり段々お腹が痛くなってきました。担当医が回診に来てくれたので告げると、「痛み止めを外したって思ってるから痛く感じてるのかも」と言われました。要するに気の持ちようだと。しかし、その後具体的に物理的な痛みが増して、ベッドで体を起こして座ることもできないし、立ち上がることもできなくなりました。まさに「三歩進んで二歩下がる」です。できていたことができなくなりました。

 

流動食

そして4日目になり、回復具合が完全にペースダウンしてしまったのですが、CTの結果、残念ながら20%の割合で発生する合併症が起こってしまいました。この合併症の治療に1年以上かかる場合もあるそうですが、治らないものではないそうです。もう、毎日毎時間が辛くて、何を言われても受け入れる気力が無くなっています。そんな中、流動食ですが食事が始まりました。重湯とスープと栄養ジュースと健康ジュースという組み合わせで4品出てきます。最初は重湯だけを飲めるだけという感じでスタート。次は重湯半分、栄養ジュース半分という感じです。流動食的栄養ジュースは明治が国内のトップシェアなんですね。免疫強化や早期回復の実績がある飲み物だから、飲めるなら飲んだ方が良いと管理栄養士さんに言われ、栄養ジュースも頑張って飲むようにしました。このような医療補助食品的なものは、やはり不味いというのが最大の関門ですね。最後までどうしても飲めないジュースもありました、

例えばこの段階で私がひとりでできることとして、トイレに行くというのがあるのですが、こんな感じです。ベッドのリクライニングを起こして、体を起こします。急ぐとフラつくので、そこで小休止。座った状態で両腕を腰の横について体を浮かせてお尻をズラしながら、ベッドの端に移動します。息を整えて靴を履きます。屈むとお腹が痛いので、靴を履くのはなかなか難しいです。フラつかないように呼吸を整えて、自信がなければナースコールして付き添いをお願いします。ドレーンが2本お腹から出ているので、廃液バッグを首からかけます。痛み止めも首からかけます。自分に付いている全ての管やコードが、どこかに引っかかってないか確認しつつ、点滴棒を杖代わりにして立ち上がります。気絶が一番怖いので、ここでもう一度大丈夫か確認します。行けると思ったらゆっくり歩き始めます。コケると大変なので、歩くことと意識を保つことに集中します。トイレから戻ると、息が上がって、しばらく休憩しないと次の行動ができないという感じです。

 

謎の病

入院生活も1週間を過ぎ、ついに私はいつもの奇病に襲われました。これは、本人感覚だとリンパの異常だと思うのですが、入院が1週間を超えると現れ、症状ははっきりしています。

名付けると、「振動累乗的 脇下激痛症候群」という感じです。感覚的には脇の下にフニャフニャの剣山が埋まっていて、本人が動かなければどこも痛くありません。歩くなどして体が振動すると、剣山の針が固くなり痛みを伴います。針で刺したり、ペンチで摘まれたような痛みで、脇の下のリンパが流れる部分や乳腺が痛みます。通風発作の痛みに近いです、更に体に振動が加わるごとに、脇の下の剣山が倍に増えていきます。大変なのは下りの階段で、1段分降りるごとに、痛みが2倍、4倍、8倍、16倍と大きくなり、3段〜5段でギブアップです。走ることも2〜3歩でギブアップ。

過去には退院と同時にこの症状が現れたので、せっかく退院しても、仕事を休み続けました。医者に診てもらってMRIまで撮ったのに、病名も原因も治療法も謎で、1週間ほどで自然治癒しました。今回は入院中の発症だったので、ほぼ動けないですから振動も少なく入院中に自然治癒しました。一応先生に聞いてみたが、先生も初耳だそうで、関わりたく無さそうでした。以前大学病院の先生に聞いてみたところ、痛みが出ている1週間の間に内科や皮膚科や整形外科を受診しまくっても、「結局わかりませんでした」という結果になると思う。と言われました。入院1週間を超えたら発症という観点で、エコノミークラス症候群の類なんじゃないかとも思います。どなたか、解明していただきたい。

( ※ 写真はフリー素材です)