寺社探訪

寺社探訪とコラム

「共病文庫 ④」

「生・老・病・死」は「四苦」と言って、仏教では人生を代表する苦しみとされています。

手術前の検査入院から帰り、次の入院までの1ヶ月間、マッハのごとく日々が過ぎていきます。

 

例えば僕が死んだら

以前ダイソーの通販を利用した際、買物総額を1000円以上にする必要があったので、金額を稼ぐためにエンディングノートを買っていました。今こそこのノートを使う時だと思い、入院の半月前に書き始めました。葬儀業界の人は、自分が死んでも葬儀はしないで火葬だけで良いという方が多いです。私も同じです。そのため、必要な連絡事項以外は空欄で、味気ないエンディングノートになりましたが、部屋の机の上に置いて家を出ました。

入院5日前、近所のクリニックで薬を6週間分もらいました。病院に入院するのに、なぜか薬は持参してくださいとのことです。いつも淡々としたコトー先生が「頑張ってきてくださいっ」と気合を入れて送り出してくれました。いつもの胃痛で薬をもらいに行ったら、コトー先生が一応検査しましょうと言ってくれて、「あれ、何かありますよ、これはよく調べた方が良いです」と私の病気を見つけてくれました。あれから4年、ついに臓器を切除することになりました。これで根治とはならないでしょうから、これからもコトー先生を頼っていこうと思います。実は昨年末に引越したので、もう近所のクリニックではないのですけどね。

 

最後の晩餐Week

以前、入院中に管理栄養士さんから食事の指導を受けたことがあります。「吉野家の牛丼もだめですか?」と食い下がったら、「あなたの理想の食事は、水です」と鼻息混じりに難題を突きつけられ、しばらくは完全自炊の食事制限をしていました。現在はクオリティofライフという敗者の言い訳と共に食事制限生活は崩れています。

入院生活では食事が唯一の楽しみですが、病院食は味気ないものです。また手術した後、今食べられているものが食べられなくなるという強迫観念にも襲われます。そこで意を決して最後の晩餐Weekが始まりました。

手術後一生カレーが食べられない体になったら困るので、ココイチとC&Cに行きました。一生ラーメンが食べられない体になっても困るので、ラーメンも食べました。同様の理由で寿司も食べましたが、ケンタッキーを食べ損ねました。入院前に他人から指摘されるくらい太ってしまい、管理栄養士さんにシバかれそうですが、これで準備完了です。

 

Last three days

入院3日前、最後かもしれない仕事を終えて、散髪に行きました。風呂に入れない日が続くと鬱陶しいので、髪を短く切りました。

入院2日前、高尾山薬王院に行きました。すぐに息が切れるので登山は苦手ですが、山の中を歩くことは好きです。手術後も高尾山くらいは登れる体でいたいというのが目標です。その日の午後に、深大寺動物霊園に行きました。私は仕事で深大寺には度々訪れているのですが、プライベートでは動物霊園にしか行きません。そういえば元三大師堂の裏の崖を工事していましたが、開山堂からの眺めが堪能できる見晴らし台になって良いですね。今回も私の猫と、人間の都合で亡くなった動物たちのためにお線香を2本あげました。

入院前日に何をするか熟考した結果、荒川巡礼企画の続きに行きました。この日は関東で3月の気温としては観測史上最高を記録した日になりました。そして私が歩いていたのは、日本一暑い町熊谷市です。せっかく来たので1日フルに歩くつもりが、予定の半分でギブアップしました。方向的に西に向かって歩いていたので、午後の日差しにバテバテになり、耐えられませんでした。入院前日に熱中症で緊急搬送とか、私はそんなに面白い人ではありません。持ち物リストもチェックして、部屋のブレーカーも落として、ガス栓も閉めて、万全を期して家を出ました。

 

( ※  写真はフリー素材です)