寺社探訪

寺社探訪とコラム

「お葬式中の犯罪」

お葬式は一大事ですので、つい冷静さや気配りを欠いてしまい、そこに付け込まれて犯罪の被害に遭うことがあります。騙そうとする人は、冷製に準備をしています。

タダ食い・タダ飲み

昔々のこと、お通夜の準備をしていたら、ご近所の方と思われる年配の男性が自転車でやって来て、私に言いました。「香典出さなくても、焼香したら、寿司食ってビール飲めんだろ?」と。冗談か本気かわかりませんでしたが、相手にしませんでした。関東では一般会葬者にも通夜振る舞いをします。そして一般会葬者は不特定多数で、個人を把握できません。「食えるし、飲めるんだ。オレ、知ってんだよ」と自分で返事して帰っていきました。たぶん、お香典を出さなくても、会葬返礼品までもらえます。と心の中で呟きながら、これって犯罪なのだろうな……と思いました。

空き巣

東京ではほぼ見かけなくなりましたが、不幸事があると、家の玄関に「忌中」と書かれた紙を掲げ、通夜・葬儀が行われる場所や時間を記載していました。また、町内会や団地・マンションなどでは、掲示板に訃報を貼り出してもいました。一軒ずつお知らせに行かなくても、掲示板に貼っておけば皆さん見てくれるし、人伝てに広めてくれて便利です。一方で不特定の方々に通夜、葬儀の日付・時間帯には、この家が無人になることをお知らせしてしまっています。防犯上の理由で最近では全く見かけません。

通夜・葬儀の日時を知るための手段は、訃報だけではありません。葬儀の式場に行くと、故人の名前と告別式の時間が大看板に書かれています。担当葬儀社の車には社名が書いてあり、電話番号も調べられます。これも古い手口ですが、式場や葬儀社に「〇〇さんの葬儀に参列したいのですが、どうしても都合で伺えず、後日自宅に伺いたいので住所を教えてほしい」という問い合わせが来ます。ここまでダイレクトだと答えることはないと思いますが、ヒントを掴まれたりすることはあるかもしれません。

また、一般会葬者を装って通夜に紛れ込み、会葬返礼品に添えられた会葬礼状から喪主の住所を知ることができます。通夜の会場で翌日の葬儀・告別式の時間帯と喪主の住所を得て、空き巣に入る段取りを組みながら、高級寿司と酒で前祝いという訳です。昨今では会葬礼状に住所を書かないなどの対策が取られていますが、不特定多数を迎えるお葬式では、良からぬ目的で無関係な人が紛れていてもなかなか見つけることは難しいです。

窃盗

数年前に、葬儀関連業者を狙った車上荒らしが流行ったことがあります。葬儀社や葬儀関連会社は、葬儀会場に車でやってきて、荷物を出したり手続きしたりと車を行き来するから、いちいち鍵をかけない場合が多かったのです。お葬式の仕事は、お昼頃までに葬儀・告別式があり、夜に通夜があります。その間の空いた時間に様々な業務を行うのですが、集金業務を入れることも多いのです。葬儀は慣習的に現金でやり取りすることが多いので、葬儀関連業者の車の中には意外にも大金が入っていることがあります。そのお金を狙った窃盗団がいて、監視役と実行役に分かれて、組織的に犯行を繰り返していました。

また、お葬式会場で返礼品を高く積み上げているのを見かけますが、それが狙われたこともあります。返礼品のお渡し所に、常に誰かが居ればよいのですが、返礼品のお渡し所は、導線的に焼香が始まるまでは無人であることが多いです。気づけば無くなっていたという話を何度か耳にしました。

業者だけでなく、親族や会葬者もターゲットにされてしまいます。お葬式では喪服を着ますので、普段身につけている財布や貴重品をカバンに入れることが多いと思います。そのカバンを常に持ち歩くつもりでいても、葬儀の中のどこかの場面で目を離してしまうことはあります。葬儀社側の立場から貴重品はお手元にと注意を促しますが、明らかにお香典をまとめた袋でさえ、鍵のかかっていない親族控室や葬儀式場の椅子の上にポンと置いたままにされているのを見かけます。出来心ではなく最初から狙っていたら、簡単に盗られてしまうと思います。

不払い

葬儀は最初に仕事が発生して、その対価は後払いが基本です。これは本当に希なことですが、代金を回収できないことがあります。例えば喪主が若くて蓄えが無かったり、遠い親戚が費用を負担したりする場合、支払いがスムーズにいかないことがあります。もっと直接的に、事業の失敗や借金苦での自殺の場合、回収が難しい場合があります。かつて、裏社会の方々に借金をしたまま亡くなった方の葬儀で、香典を守るために会葬者に私服警官が紛れていたことがあります。

葬儀は葬儀社が元請けし、生花店、返礼品業者、仕出し業者など各専門業者に発注して成り立っています。葬儀社が喪主から支払いを回収し損ねると、全付帯業者への支払いが滞るという事態になることもあります。ここまで来ると、会社の体質というか社長の性格というか、支払いの悪い会社はいつも問題になります。とある仕出し屋の社長が、「金払えー!!」と書いたボードを見せてくれたことがあります。これを葬儀社の前で掲げて抗議すると言ってました。

 

他にも火葬場で親族同士が殴り合いの喧嘩になったり、やらずぼったくりの葬儀社がいたり、お葬式には思いもよらぬことが起こります。もうかなり昔のことですが、東京の葬儀場で暴力団同士の発砲事件もありました。日常とは違う特別な場所ですが、自分の隙を狙っている人がいると思って、用心するに越したことはないです。

(※ 写真はフリー素材です)

 

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