寺社探訪

寺社探訪とコラム

五色不動尊巡礼「目黄不動尊(最勝寺)」

目黄不動尊最勝寺

住所:東京都江戸川区平井1-25-32

名称:天台宗 牛宝山(ごほうざん) 明王院 最勝寺

創建:元慶元年(877年)

本尊:釈迦如来

五色不動尊ですが、6カ寺を巡るのがスタンダードです。目黄不動尊が2つあります。どちらが本物かという論争をしないで、両方で良いとしたのは平和的です。JR総武線平井駅から歩いて15分ほどの住宅街の中にあります。

赤い囲いがよく目立つ仁王門です。もう一つの目黄不動尊の永久寺も古い寺院でしたが、この最勝寺はさらに古い歴史を持つ寺院です。貞観2年(860年)に慈覚大師円仁が東国巡錫の際に、隅田川畔にて、大日如来像と釈迦如来像を自ら彫刻します。巡錫(じゅんしゃく)とは、錫杖を携えて巡ることから、僧侶が各地を巡り教えを広めるという意味です。そして、これを本尊とする一宇を草創し、同時に地域の守護のため須佐之男命を勧請して牛島神社に祀り、大日如来本地仏としました。その後、元慶元年(877年)に円仁の弟子の良本によって牛宝山最勝寺として開山されました。

背の高い建物が少なくて、広々とした境内です。こちらは「最勝寺廟堂」とありますので、納骨堂だと思われます。まだ新しいので、時代のニーズに沿った永代供養式の納骨堂だと思われます。菩提寺にこのようなお墓があれば、子や孫に負担を背負わせたくないとお考えの方も安心ですね。

その隣には石仏の山。これは逆に歴史が感じられて壮観でした。広々とした境内にきれいに整えられていて、清々しさを感じます。877年の創建ですから、すごい歴史がある寺院です。こういう石仏のひとつひとつ、いつ、何のために創られて、どこにあったのか、というのがわかれば良いのにとよく思います。

境内が広々としている寺院は鉢植えを並べて置きがち、という寺院あるあるですね。本堂には釈迦如来像がご安置されています。不動明王ではありません。慈覚大師円仁が刻んだ大日如来像と釈迦如来像があると書きましたが、大日如来像は須佐之男を祀った牛島神社に祀られ、最勝寺が牛島神社の別当寺となります。明治維新最勝寺と牛島神社が切り離され、大日如来像は最勝寺に移されます。大正時代になって、駒形橋の架設による区画整理で、最勝寺は現在の地に遷座されました。

こちらは珍しい法華塔です。天台宗なので、大体の経に関係しています。開基1150年記念に建立されました。法華経というのは仏教が日本に入った時に、同時に伝えられています。日蓮宗系統の宗派に顕著なのですが、仏教の経の中でも最重要視されることが多いです。日本で広まったのは鳩摩羅什の翻訳による法華経なのですが、全部で28章節で構成されています。第2の方便品、第16の如来寿量品、第25の観世音菩薩普門品(観音経)などが有名です。

こちらが不動堂です。鉢植えがたくさん置かれています。目黄不動尊の名の所以となるのがこちらの不動堂なのですが、もちろん不動明王像が安置されています。本堂の本尊である釈迦如来像と大日如来像は慈覚大師円仁の作という寺伝ですが、この不動明王像は更に古く、なんと良弁僧都の作とされています。良弁は言わずとしれた奈良東大寺を建立した人です。最勝寺の末寺だった東栄寺に祀られていましたが、明治維新廃仏毀釈東栄寺が廃寺になり、最勝寺に移されたという訳です。最勝寺明王院という院号なのは、このことが由緒なのです。

不動堂の前に短いですが橋がかかっています。この橋は「除災招福の橋」と称し、目黄不動宝前諸願成就大護摩修行の聖灰の上に掛けられているそうです。

寺社あるあるですが、寺伝と史実が噛み合わないことが多々あります。詳細の事情がわかれば納得のものもあれば、どう考えてもおかしいものもあります。例えば五色不動天海大僧正徳川家光に進言して、選定された5つの不動尊とされていますが、実は明治後期か大正期に始まったものという史実があります。そんな訳で、良弁僧都作であったはずの不動明王像は、右目が大きく見開かれ悪事を許さず、左目は半開きで慈悲を表していて、亨保9年(1724年)仏師松村理右衛門の作として江戸川区有形文化財に指定されています。ん?

こちらは馬頭観音の石碑です。塔婆を見ると、動物供養をしているようですね。ペットを飼われている檀家さんは菩提寺にお参りできるところがあって、きちんと供養していけますね。

こちらは境内社最勝稲荷です。眷属の狐様がいらっしゃいます。隣ですごく人懐っこそうな猫が、鳴きながら存在を訴えてきます。お寺の境内にいる猫を可愛がってしまうと連れて帰りたくなるので、あまり触れないようにしています。おそらくは最勝寺の住職のご家族が大切にされている猫なのでしょう。最勝寺は納骨堂や動物供養など、人々の生活の変化と仏教との関わりをきちんと考えて運営されている寺院なのだなと感じました。私の日常では滅多に訪れない江戸川区までやってきましたが、とても清々しい気分でお参りできました。以上で、私の五色不動尊巡礼は終了になります。目黒不動尊だけ規模が飛び抜けていますが、巡ることで理解も深まりますし、なんとなく達成感もありました。