寺社探訪

寺社探訪とコラム

「生きた証 甲斐犬ブリーダー崩壊事件」

2月22日は猫の日です。ということで、私の愛猫が眠る深大寺動物霊園に行ってきました。この日は合同の四十九日法要が行われていて、終わった頃を見計らって訪れました。

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私は犬を飼ったことはないのですが、Youtube「ポチパパちゃんねる」を応援しています。応援と言っても動画を見たりカレンダーや本を買ったりする程度です。ポチパパさんは犬に関わることでは並ぶ者のない領域にいる人だと思いますが、人柄的には典型的なB型の人で、結構頑固で自分を大好きな人だなぁと感じます。だからこそ過酷な生活を物ともせずに暮らしているのでしょう。もう少し施設をきれいにして欲しいといつも思いますが、自分が気にならないことは気にしないのがB型人間ですね。ポチパパさんの話は知識になるような内容でも、言葉の言い回しなどから、動物愛護精神の本質が伝わってくることがあります。こんな視点で犬と人の関係を見ているのか、こんなことまでして当然なのか、と気付かされます。

 

最近立て続けに話題になっているブリーダー崩壊事件の中に、八王子市(記事公開当初に埼玉県としてましたが誤情報でした。失礼しました)の甲斐犬80頭+柴犬20頭のブリーダー崩壊があります。私は「ポチパパちゃんねる」でこの事件について知りましたが、地元のNPO法人さんが中心になって複数の団体が協力して救助に乗り出しているようでした。ポチパパさんもこの崩壊現場からまず5頭を引き取り、落ち着いたら更に引き取っていくとのこと。甲斐犬は誰でもどこでも飼える犬種ではないので、かなり難易度の高いレスキューになるとのことでした。

どの動物愛護団体も掲げるスローガンとして「殺処分ゼロ」というのがありますが、ゼロではない現状からもわかるように、通常多くの動物愛護団体はそのレスキュー能力の目一杯に近い状態で活動しているそうです。そんな状態で多頭崩壊をレスキューするには、多くの人からの経済的支援や人的支援が必要不可欠となります。ポチパパさんがYouTubeライブで必要な物資や人的支援を視聴者に伝え、その瞬間から支援や協力が集まり始めます。ポチパパさんの話によると、生まれてずっと劣悪環境にいたために、酷い栄養状態や病気の蔓延などで深刻なダメージを受けている可能性があり、全頭救出する間にも命尽きる子がいるのではないかとのことでした。

当初の予定は5頭でしたが、ポチパパさんが車に積めるだけ連れてきてくださいと英断し、11頭の甲斐犬ボランティアさんの運転する車でポチパパさんの施設にやってきました。「もう動画(崩壊現場の報告動画)を見るのんが辛くてね……」と、涙ながらに語るポチパパさんは、多くの支援にも「もう、涙が出てきます」と声を震わせて感謝していました。無謀だと非難するコメントもありましたが、愛護団体同士のやり取りなのでお互い無理な保護はしないしさせない、過去に今回を超える経験もあり、可能な範囲内なのですよ、とポチパパさんは話していました。


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それでもポチパパさんは多くの支援を受けて、かなりのプレッシャーを背負っているようでした。応援してくれている方に、保護した11頭の甲斐犬の様子を随時お伝えしますとのことでした。

到着したその日の夜に、さっそくウェルカムライブと称して、甲斐犬たちの犬舎から生放送をされていました。体のケアが済んだら、施設のリハビリ犬たち(ポチパパさんの施設には、心の病んだ犬をリハビリする凄い犬たちがいます)とフィールドで遊ばせたいなど、視聴者さんと共にこの先の展開に夢を広げていました。

翌朝のゲリラライブで、早朝から11頭のお世話をしていたポチパパさんから、容赦ない現実が視聴者に伝えられます。皮膚病の子が多い、ずっと吠えている。食糞する子が多い、この子は耳が切れてる、ご飯を食べない、水を飲まないなどなど。そのような子にはどのように対処するべきかを解説するポチパパさんでしたが、中にかなり危険な状態の子がいるので、病院へ連れて行きますとのことでした。

その夜のライブでは、診察の結果が伝えられました。血液検査の結果などを聞いていると、生きているのが不思議なレベルです。体温が34度しか無く、口からドロっとした血が出ているのに、体が弱りすぎて検査もできないとのこと。せっかく救出されたのに、なんとか生命力が勝ってほしいと願っていると、ポチパパさんがこの子に名前を付けようと言い出しました。病院で名前を聞かれ、名前がないのも可哀想だと思ったとのことですが、おそらく悪い想定もしていて、せめて名前を付けてあげたいということなのかなとも感じました。甲斐犬だからカイちゃんとポチパパさんはサッと決めてしまいました。その後、視聴者さんの意見で、海の貝の貝ちゃんに決まりました。色々と深読みできる良い名前が付きました。血を吐く原因を検査するために、その検査に耐えられる体力を取り戻すために、まずはご飯が食べられ水が飲めるようになるために、とりあえず毎日点滴をするために病院に通う、という何重もの壁に立ち向かうポチパパさんと貝ちゃんを視聴者さんたちが応援します。

翌朝も貝ちゃんの様子をショート動画で公開していました。昨日よりはマシに見えます、後で病院に行ってきますと、ポチパパさんが報告する短い動画でした。そしてその日のお昼頃、貝ちゃんが息を引き取りましたという報告の動画が上がりました。こんな残酷なことが起こるのだと、世を恨みたくなります。「これからやったのに……」と涙声で悔やしがるポチパパさんが、結局名前を付けたことだけが、この子にしてやれた唯一のことだったと語っていました。暗い寒い場所で誰の温もりも知らず、痛い辛いだけの犬生を送り、そこからようやく救い出され、わずか2日で・・・。多くの方に応援していただいたのに申し訳ないと、残った子たちが幸せになるように頑張るのでどうかお許しくださいと、ポチパパさんは泣きながら謝っていました。しかし、謝るべきはポチパパさんではありませんね。悪徳繁殖屋と行政が貝ちゃんの命の責任を負うべき人間です。繁殖屋も行政の担当者も、貝ちゃんの生涯をどう思っているのでしょうか? 

貝ちゃんが息を引き取る瞬間に側にいてやれなかったとポチパパさんは悔やんでいましたが、ポチパパさんのおかげで、貝ちゃんはたった2日間だけど犬らしく暮らせました。首輪を付けてもらって、脱水にならないように工夫してホットカーペットを敷いてもらって、クレートの入口に毛布をかけてもらって、抱っこして病院に連れて行ってもらって、素敵な名前を付けてもらいました。人々の心を動かし、何千人、何万人から応援してもらいました。本当に残酷な現実なのですが、今となってはポチパパさんと暮らした2日間で、貝ちゃんが何か温もりを感じてくれたことを願うしかありません。

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貝ちゃんが息を引き取った日の午後、私は葬儀の司会の仕事をしていました。故人様は私の子どものような年齢で、自ら命を絶ってしまった方でした。生きたいのに生きられない命がある中、生きているのに生きられない命がある。この世は苦で満ちているという仏の教えは正しいのかもしれません。

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私は深大寺萬霊塔の十二支観音菩薩の前に立ち、いつものように私の猫のために線香を1本立てました。そして、貝ちゃんのためにもう1本。ポチパパさんは神仏への信仰心はないそうですが、私は寺社探訪者なので、観音菩薩に伝えました。仏の教えが正しいのなら、貝ちゃんに訪れる来世は、笑顔と慈愛に満ちた温かく素晴らしい人生であるはずですよねと、念を押しておきました。


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