寺社探訪

寺社探訪とコラム

「柴灯大護摩供に行く 2023」

人生最暑の夏がまだ続いていますが、もうお彼岸が近づいていますね。私は持病があるのと貧血を起こしやすいので、熱中症対策としてこの2ヶ月間はすっかり引き籠もっていました。9月も半ば過ぎなので、そろそろと思って久々に出かけました。と言っても、この日の東京の予想最高気温は34℃でしたが……。

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特別企画「江戸六地蔵+街道」で訪れた品川寺で行われた、柴灯大護摩供に行って参りました。前日から旧東海道品川宿で「しながわ宿場まつり」が開催されていて、野菜の特売や花魁道中やお囃子の生演奏やキックターゲットやフリーマーケットやライブステージなど、様々なイベントが盛大に行われています。大混雑する場所が苦手なので憂鬱に思いながら、真言宗醍醐派の行事を初めて見るので、期待感を持って品川寺に向かいました。

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到着したのは開始時刻の5分前。多くの見物の方で賑わっていました。規模的には薬王院や川崎大師よりも小さいですが、宿場まつり開催中ということもあって、偶然の見物者も多そうでした。良き見物場所を探してウロウロしていると、初老の紳士に「これから始まるのですか?」と聞かれました。門を入ったところで、小さな護摩木が500円で販売されていました。この護摩木に願い事と名前を書いて、炎の中に投げ込むシステムとなっています。

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柴灯大護摩供をレポートするのは4回目になりますが、会場の造りを見た感じでは大きな違いは無いようです。これまでレポートした高尾山薬王院川崎大師平間寺真言宗智山派の寺院ですが、品川寺真言宗醍醐派で、別格本山という宗派の中核寺院です。関東では真言宗というと豊山派か智山派が馴染み深いのではないでしょうか。逆に関東以外では高野山真言宗が主流でしょうか。京都の方々は宗派名より寺院名で区別していそうですね。

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真言宗醍醐派の総本山は京都にある醍醐寺です。真言宗は教義的に新義真言宗古義真言宗に分けられるのですが、豊山派と智山派は新義真言宗、醍醐派は古義真言宗になります。宗祖は他の宗派と同様に弘法大師空海ですが、醍醐派の派祖は理源大師聖宝という僧です。聖宝の肖像画を見ると山伏の格好をしているので、教義的にも山岳信仰にグッと偏った分派のようです。ところで山伏って僧侶なの? という疑問が湧くと思いますが、正確には山伏=僧侶ではありません。僧侶の資格を持っていて、山伏としての修行も積んだという方は多くいらっしゃいます。ですが、山伏の中には僧侶としては活動していない人もいらっしゃいます。曖昧な知識で申し訳ないのですが、例えば奈良の大峰山のような修験道場で一定の修行を経て、修法を会得したと認可された行者であれば、どこかの宗派の僧侶としての資格がなくとも修験者(山伏)として活動できたはずです。

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さて、柴燈大護摩供は13時に始まる予定なのですが、13時15分になっても何も起こりません。周囲の人々からも「まだかなぁ」と不安がる声が聞こえてきます。すると、何でも知っている人がいるもので、隣にいたマダムの会話が聞こえてきました。12時から品川宿の入口(京急北品川駅付近)を出発するパレードがあって、品川寺の山伏さんたちも江戸時代の装束を着た人々やマーチングバンドと一緒にそのパレードに参加しているとのことでした。パレードのゴールが品川寺に゙設定されていて、そのパレードが遅れているから始まらないのだと判明しました。

マーチングバンドの太鼓の音の後に、山伏さんたちの法螺貝のブォォーという音が聞こえてきて、ついに柴燈大護摩供が始まります。品川寺では一般参加可能な火渡り修行も行っているので、檀家さん始め地元の方々には一大イベントですね。

大まかな儀式の流れは、他の真言宗寺院の柴燈大護摩供の儀礼と変わらない感じです。興味のある方は過去の火渡りまつりの記事をご覧ください。違っていたのは、神斧や宝剣と同じように、護摩壇に向かって法螺貝を吹くという儀礼( ↑ )がありました。あとは、儀礼の前にお加持をしなかったです。高尾山では火切加持、川崎大師では洒水加持をしていました。何かの形に省略していたのかもしれませんが。

とにかく暑かったので、行者さんたちも熱中症対策で、こまめに水が配られていました。見物者の中に親子連れがかなり多かったので、大丈夫かなと心配していましたが、消防署の方々が見回りながら、「体調がおかしい方いませんか?」と声をかけていました。

そして、願文が読み上げられ、いよいよ点火が近づいてきます。品川寺の柴燈大護摩供では事前に特別な寄進を行うことができて、3000円と10.000円のコースがあったと思いますが、それぞれ御札をいただくことができます。高尾山薬王院では特別な寄進をした個人や法人の名前を全員分読み上げるというスパルタな儀式となっていて、暑い中嫌な予感もしていましたが、品川寺の願文は簡潔にまとめられていて良かったです。上( ↑ )の巻物が、薬王院のときは数十メートルありそうでした。

そして点火されたのですが、風がこちらに吹いていたので私の周囲の人々が大変な状況になってしまいました。ヒノキの葉で護摩壇を覆っているので、生の葉が燃える煙なのです。皆さんハンカチやタオルで口を覆い、避難訓練のような状態です。会場が狭いというか、客席が近いというか、煙と熱気が半端なかったです。我慢していた方々も、最終的には避難していました。すぐに消防署の方が安全チェックの声かけに来ていました。モクモクの煙が立ち込める中、行者さんが護摩壇の煙に当てた梵天を振って、周囲の人々にお加持をして回っていました。私の周囲の方々は檀家さんや地域の関係者さんが多かったようで、皆さん合掌礼拝してお加持を受けていました。これも煙の方向によっては、一体何をされているのか全く見えないという状態でした。

炎が上がってからは、今度は風が吹くと炎が客席に届きそうになり、熱いというか、焼かれるという感覚で、周囲から悲鳴が上がっていました。いつの間に全身灰まみれで、これは火渡り以上のご利益を得られるのではないかと思いました。ここで見学者の皆さんが500円で購入した護摩木を炎の中に投入するのですが、薬王院では事前に預けておいたものを行者さんが投げ込みます。川崎大師では順番に結界の中に入って自分で投げ込みます。品川寺では結界の外から投げてもじゅうぶん届く近さでした。そりゃ、熱い訳です。

ある程度火が落ち着いたところで、行者さん方が先に火渡りをします。これが、今まで見てきた火渡りの中では、最も勇気ある火渡りで、まだ燃え盛る中を渡っていました。流石は真言宗醍醐派です。絶対に熱いはずで、渡り終えた後は足が真っ黒になっていました。行者さんたちが渡り終えると、更に火を落として安全を確保してから、一般の火渡りになります。これは事前に護摩札の申込みをした方でなくても、誰でも参加できると説明がありました。

私は今年既に高尾山で火渡りをしているので、ここでは見学のみです。火渡り希望者の列は、山門を超えて旧東海道を曲がって伸びていました。といっても、境内や参道は狭いので、列が長いだけで進むのは速そうです。

実はこの青物横丁付近は、かつて品川区で配達の仕事をしていた頃はよく訪れていました。品川シーサイド方面にも巨大マンションがたくさんありますからね。このエリアでは息が上がるほど時間に追われて走った記憶ばかりなので、落ち着いて寺の行事を見物しているだけで優雅な気分がします。都心で火渡りできるのはなかなかありませんから、都心にお住まいのセレブな皆さまは、ぜひ品川寺の柴燈大護摩供に参加してみてくださいませ。

 

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