寺社探訪

寺社探訪とコラム

大山阿夫利神社

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大山阿夫利神社 目次

名称・旧社格

大山阿夫利神社(おおやまあふりじんじゃ)と称します。旧社格は県社です。

創建

崇神天皇の御代、3世紀頃と伝わっています。

御祭神

大山祇大神(おおやまつみのおおかみ)

大雷神(おおいかつちのかみ)

高龗神(たかおかみのかみ)

ご神徳

古来より雨乞い信仰が有名でした。水と緑に満ちた五穀豊穣の山の神としても親しまれています。大山詣では商売繁盛や賭事の勝ち運を求めて、人々が集まりました。

みどころ

山中に築かれた境内からの眺めは絶景です。山頂の本社への登山は、日帰り登山としてちょうど良い感じです。下社まで来れない方のために、門前町に社務局もあり、各種ご祈祷をしていただくことができます。縄文時代から江戸時代の大山詣へと受け継がれてきた信仰に触れることができます。

アクセス

小田急線「伊勢原駅」より神奈川中央交通バス「大山ケーブル」行き、終点下車徒歩15分「大山ケーブル」乗車「山上駅」下車徒歩

探訪レポート

丹沢山系大山の中腹にありますが、こちらは下社ということで、山頂に本社があります。といっても、御祈願の受付や授与品など神社としての機能は、下社に集められています。下社に来ることが難しければ、ケーブル下駅前の門前町に社務局があり、社務局でお参りや祈願をすることもできます。本社へはかなり大変な山登りとなっています。本社への参拝は、特別企画「山+神」でレポートしていますので、是非そちらもご覧ください。

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山の中にありますので、いくつかの段差がある境内になっています。その一番下にお土産や軽食か売られている、有名な「ルーメソ」があります。このお店の名前は「さくらや」というのですが、店頭に下げられている裏向き横向きの「ラーメン」ののぼり旗「ルーメソ」の名前の方が有名になってしまっています。

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売店を過ぎると、上の段に上がる階段があります。少し上がったところに、参集殿と手水舎があり、更に上がると大鳥居があります。

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手水舎には山内で湧き出た御神水を引いているそうですが、コロナ対策で利用できなくなっていました。最近、多くの神社で同じものを見かけるのが、手水舎の斜め後ろにある案内ボードのようなもの。液晶タッチパネルになっていて、効率よく多くの情報を参拝者に伝えることができるのだと思います。実際にまじまじと見たことはないのですが、本当に多くの神社がこの案内ボードを採用しています。手水舎そのものは、鳶職人さんの組合の方々が奉納した旗が下がっていて、どことなく大山詣っぽい雰囲気を感じました。

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階段を登り終え、この大きな鳥居をくぐると、広い境内に到着です。基本的にはこの段に拝殿や社務所境内社や各建立物があります。社伝を読むと、祭祀に使用したと思われる紀元前1000年頃の縄文式土器が山頂から出土しているとのことですが、こちらは後の研究で後世に山伏が埋めたものと結論付けられています。といっても、この大山は実際に縄文時代から神の宿る山として信仰されてきたのだと思います。阿夫利神社下社には拝殿はあっても本殿がなく、祀られている神はいません。阿夫利神社の御祭神は、全て山頂の本社に祀られていて、下社は山の中腹から山頂に向かって祈りを捧げる、遙拝所のような位置づけです。これは山そのものが御神体というカンナビ信仰や、山頂の岩に対するイワクラ信仰といった縄文時代の信仰がそのまま形になっているように見えます。

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ちょうど階段を上がりきった高さにあり、眺望が開けているので、眺めていると気持ちいいです。元々、山に霧が生じて雨を降らすことが多く、雨降山(あめふりやま)と呼ばれていたそうです。927年の延喜式神名帳には「阿夫利神社(あふりのかむやしろ)」と記載されています。古代からの神聖な場所には、大和王権によって「かむやしろ」として日本神話の神が祀られ、更に仏教の影響で神仏習合し、「かむやしろ」を管理する別当寺が建てられます。日本の神仏習合は、仏教の方が少し強い(支配的)ので、この大山でも神仏習合の神「石尊権現」を祀り、大山寺が山全体を管理支配していた状態が続いていました。現在阿夫利神社下社がある場所も、かつては大山寺の本堂が建っていて、石尊権現は大山寺から全国の石尊社に勧請(分霊)されていました。結局は、明治維新廃仏毀釈で大山寺は破壊されてしまい、阿夫利神社がこの地に再建されたという訳です。

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こちらの銅像は、「大山詣」が日本遺産に認定されたことを記念して建てられたものです。鳶職の方々に人気だったということで、半纏とはちまき姿の若者が、大きな小太刀を持って進む姿が表現されています。大山詣では、このように大きな小太刀を持って山頂の石尊権現にお参りをします。これは、源頼朝が自分の小太刀を大山寺に奉納したことによるものだそうです。石尊権現に小太刀を納めるのですが、粋な江戸っ子の鳶職人は、より粋な小太刀を担いで上がろうと、どんどん小太刀が大きくなり、6~7メートルのものを奉納した例もあるそうです。山頂までの間に滝があり、そこで体を清めると称して彫り物を見せ比べ合い、「粋な」小太刀を担いで登るという奇怪なお詣り方法になったのだそうです。そんな様子が現在も残る浮世絵に多く描かれています。

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神社によくある獅子山です。富士山の岩で作られているそうです。こちらは日本三大獅子山のひとつだそうです。でました。このブログでも度々登場する「三大」シリーズです。大山詣が流行した頃に奉納された獅子を組んで獅子山を築いていたのだそうですが、関東大震災による山津波で破壊流出してしまっていたそうです。平成24年に皇太子殿下(現在の天皇陛下)が大山登山をされた記念に完成した獅子山だそうです。

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こちらが拝殿です。私は山頂の本社にも登山する予定でしたので、これから向かう御神体に向かって拝むという感じです。拝殿そのものは自然の厳しい場所にあるからか、コンクリート造になっています。比較的新しいもので、やはり木造のような味はありません。最近、といってもこの10年ほど、お寺や神社でよく見るようになったのが、阿夫利神社下社の拝殿の扉に付けているアクリル板です。いろんなお寺の本堂でよく見かけます。以前は扉を開けっ放しにしていたのでしょうが、風やら虫やら、時には鳥やら人間やらが入ってきて、不都合なことも多かったのでしょう。かといって参拝客がいるのに扉を閉めてしまうのもよろしくないという葛藤を、上手に解決する方法ですね。

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扁額には阿夫利神社と書かれています。鈴はコロナ対策で鳴らせないようになっています。私同様これから本社へ登山する方が多かったので、道中の安全を祈願する方が多かったと思われます。拝殿の隣に社務所があり、各種受付や授与品を求めることができます。

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拝殿の左側に境内社が並ぶエリアがあります。一番高い石碑は「大天狗の碑」です。こちらは、山中から天狗が降りてきて……というお話かと思いきや、戦争反対の願いが込められています。大山詣のたくさんある講のひとつ「天狗講」の講元の方が、戦後アメリカに占領され、アメリカ化した世の中になっても、日本人の心と未来が守られるようにとの願いを込めて建てたそうです。

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こちらは浅間社です。木花咲耶姫、磐長姫をお祀りしています。大山阿夫利神社の御祭神である大山祇神は、木花咲耶姫と磐長姫の父神にあたります。また、浅間社は富士山信仰の本拠地でもあります。富士山と大山は「両詣り」と呼ばれたように、お参りすべき山としてセットにされていました。

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境内には見事な眺望を堪能できる「石尊」というお洒落なカフェが併設されています。知人で寺社併設のお洒落カフェを巡る人がいますが、そういう方には是非おすすめしたいお店です。近くを歩いていたら、「写真を撮ってください」とスマホを渡されました。二十歳前後の男3人組という、記念を残すことを考える歳でもなさそうな若者たちも、思わず一枚撮りたいと思わせる景色なのです。

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こちらは、山頂へ向かう登山道に通じる扉です。かつては誰もがいつでも入山できる山ではありませんでした。門の扉が半分閉まっているのは、まだ山開きをしていないという意味です。現在は年中登ることができますが、本来の山が開かれていない期間は、このように扉が半分閉じられています。大山山頂への扉を開く儀式は、門の支柱に書かれている「日本橋お花講」の方々のお役目として代々受け継がれています。

門の前に大祓と小さなお札が置かれています。大祓を手にとって自分の身を清め、お札を1枚いただいて、山頂へ向けて出発します。おそらく、ケーブルカーで下社まで来て、お参りと観光をして、山頂の本社へ向かう方が多いと思いますが、下社で絶景を眺めながら美味しいお茶を飲んで帰るというのも、素敵な時間の過ごし方だと思います。

 

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