寺社探訪

寺社探訪とコラム

「お面かぶりに行く」

九品仏浄真寺で行われた「お面かぶり」を見てきました。九品仏浄真寺は整えられた美しい境内が特徴で、特に紅葉が素晴らしく、当ブログの「紅葉を楽しめる寺社 3選」の1位に選ばせていただきました。

九品仏浄真寺の「お面かぶり」は4年に1度の開催です。元来は3年ごとだったのですが、2020年より4年に1度に変更になりました。しかし2020年の開催がコロナ禍で中止となり、今回は7年振りの開催という訳です。お面を被った滑稽な姿の行列が印象的で、そのビジュアルだけに惹かれて訪問したので、どんな意味を持ってどのように開催されるかは、全く知らないままやってきました。浄土宗の寺院なので、そんなに派手ではないと予想していました。

やはり7年振りだからか、すごい人出です。流石に観光地としても人気のある九品仏浄真寺の一大イベントですので、誘導は地元の警察署が担当していました。総門の前で若いお坊さんと小学生くらいの男の子が、全員に団扇を配っていました。有り難いですね。男の子から団扇をいただくと「ようこそお参りくださいました」と言われ、びっくりしました。きっとお寺の子に生まれたんでしょうね。

こちらは閻魔堂で、日頃はお賽銭を入れると閻魔大王のお告げが音声で流れるようになっています。この日は双盤念仏奉納のために中止とのこと。双盤念仏は独特の節で読経念仏するのですが、動画でしか見たことが無かったので、しばらくここで実際の双盤念仏を聞かせていただきました。

九品仏浄真寺は、美しい景観の寺院で素晴らしい庭園も見どころなのですが、これだけの人が殺到していると、流石に景観は楽しめません。こちら( ↑ )は境内にあった看板ですが、知っている方なら何とも思わないかもしれませんが、知らない私にはこれが滑稽に見えて、ぜひ実物を見てみたいとずっと思っていました。実は滑稽だなんて失礼な話で、江戸時代から続く民族芸能文化として、東京都の無形文化財に指定されている行事なのです。

山門は寛政5年(1793年)の建立で金剛力士像と風神雷神がご安置されています。上層部の扉が開いていますが、こちらには阿弥陀如来像と二十五菩薩像がご安置されています。まさに今回主役の仏像ですね。

九品仏の名の由来は、九体の阿弥陀仏がご安置されているからです。上品、中品、下品の三つのお堂に、三体ずつご安置されています。こちらは下品堂です。会場が近いので、アナウンスで司会の方がこの「お面かぶり」の意味や段取りについて解説しているのが聞こえます。正しくは「二十五菩薩来迎会」というそうです。浄土宗では亡くなると、お浄土から阿弥陀様が迎えに来てくれると言われています。その時に阿弥陀様は二十五菩薩を従えて西方極楽浄土からやって来るのですが、その様子を再現する行事なのだそうです。

下品堂の前に御朱印や授与品のテントが建っていました。お面かぶりの特別授与品も販売されていました。奥の方には救護テントや警察のテントも建っていて、いかにこの地域を代表する行事であるかが伺えます。

会場らしき場所に到着しました。11:00から開始予定で10:40到着です。前の方には行けませんでしたが、まずまずの場所で見学となりました。会場の造りは、本堂と正面にある上品堂の間に橋がかけられています。橋の中央辺りに巨大な角塔婆があり、白い紐で本堂と角塔婆と上品堂を結んでいます。

11:00になりましたが、なかなか始まらないと思ったら、後ろの方がガヤガヤと騒がしくなっています。どうやら後から来られた方々が見えないとのことらしい。警察官と揉めている人もいて、司会の方がアナウンスでもう少し全体的に前に詰めてくださいとお願いしていました。こうなるとなかなかの場所だと思っていた場所も、窮屈で見づらい場所に変わってしまいます。まぁ、何も見えなかった多くの人達が、それで見えるようになるなら良いんですけどね。

10分遅れで始まりました。最初は本堂から上品堂に向かって歩きます。まだここではお面はかぶっていません。上品堂でお面を装着してまた橋を渡るのだそうです。ちなみに本堂のご本尊は釈迦如来で、上品堂に阿弥陀如来がご安置されていますから、上品堂が阿弥陀仏と二十五菩薩の出発点、今回の行事においては西方浄土と見做している訳です。その対極にある本堂は此岸いわゆる現世と見做しているんですね。そして、この世とあの世の間に架けられた橋を渡るということです。

まずは浄土宗の大本山である港区の増上寺雅楽衆の皆さんが先頭で雅楽を奏じながら、上品堂から本堂に向かって橋を渡ります。いよいよ西方浄土から阿弥陀仏と二十五菩薩が迎えにやってくる様子が再現されます。

その後ろに今回菩薩を担当する信者とそれぞれの付き添いの方が橋をわたります。お面をかぶって、それぞれの菩薩が果たす役割に因んだ法具や楽器を手に歩いています。アップで撮影したいところなのですが、ここでスマホが熱を持ちすぎてカメラが使えなくなってしまいました。電源を落としたりいろいろやってみましたが、ホッカイロのように熱くなってダメでした。以後はなんとか撮れたものを掲載しております。

1度本堂に入って、そこで読経がありました。その後、本堂から再出発して上品堂へ向かう様子です。つまり阿弥陀仏と二十五菩薩にお迎えに来ていただき、実際に西方浄土へ導かれる様子を再現しています。最初は増上寺雅楽が先導します。

続いて菩薩が進みます。このお面と装束は非常に重くて、視界が悪いとのこと。しかも暑いので、介添えを担当する人が団扇を扇ぎながら一人ずつ付いています。この行事は亡くなられた人が阿弥陀仏と二十五菩薩のお迎えを受け、西方浄土に往生する様子を再現したものですので、菩薩を担当する参加者の皆さんは、金の袋に包まれたご先祖のお位牌を胸に抱いて参加しているのだそうです。ただ信心のみで参加しているのではなく、愛する家族にはこのようにご浄土へ辿り着いていてほしいという、祈りが込められているんですね。菩薩の後ろから浄土宗の玉川組の38カ寺の住職さんたちが散華を撒きながら歩きます。その後ろは馬の世話役の格好をした人が進みました。

その後ろから、九品仏浄真寺を開山した珂碩上人と、浄土宗の開祖である法然上人の像をご安置した厨子が進みます。これは珂碩上人を亡くなられた方になぞらえているそうです。往生という言葉を使いますが、浄土に往きて生まれんとする姿を示しているのだそうです。

九品仏浄真寺のご住職とその後ろから稚児行列が続いています。全く撮影できなかったのですが、この後、また上品堂から本堂へ、阿弥陀仏と菩薩を除く方々の練り行列が行われました。これは、往生した珂碩上人が衆生を救済しようと、再び現世にやって来る姿を示しているのだそうです。成仏とは輪廻転生のサイクルから解脱して、仏として浄土から動かないものだと思っていましたが、この行事では、仏と成るのは多くの人々に化益するためだということで、仏と成って再び現世に衆生救済のために現れるというところまで再現します。

その途中で、九品仏浄真寺のご住職から観覧の皆さんに授与十念が行われました。浄土宗は「南無阿弥陀仏」と唱えることが最も大切と教えていますが、この念仏を十回お唱えすることを十念と呼んでいます。徳を積んだ僧が衆生に十念を授けて阿弥陀仏との縁を結ばせることを授与十念と言います。見物の皆さんも私も合掌して、ご住職に続いて一緒に十念しました。

最後に参加された菩薩たちが、お面を脱いで本堂へ戻ります。これはカーテンコールのような感じで、大きな拍手で迎えられていました。司会の方が「ぜひ、大きな拍手でお迎えください」と声をかけ、優しい世界が展開されていました。ちなみに菩薩として参加したい場合は、冥加料3万円だったと思います。次回は令和10年(2028年)の予定です。かなり貴重な経験ですので、大切な方を亡くされたとか、ここぞというときに参加されると良いと思います。

 

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