寺社探訪

寺社探訪とコラム

子安神社

子安神社 目次

名称・旧社格

子安神社と称します。旧社格は郷社です。

創建

天平宝宇3年(759年)に橘右京少輔が、淳仁天皇の后の安産祈願のために創建したと伝えられています。

御祭神

木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)

御神徳

安産・子育てが有名です。

みどころ

アクセスの良い立地で、奥に伸びる境内には様々なお社があり、それぞれ別の神様を祀っています。子授け・子育て以外でも訪れる価値の高い、八王子市民に愛されている神社です。

アクセス

東京都八王子市明神町4-10-3

京王線京王八王子」徒歩6分

探訪レポート

京王線京王八王子駅から歩いて程なく、八王子の市街地に子安神社はあります。人通りの多いエリアなので参拝される方も多めです。子安神社といえば子授けや安産、子育てが有名な神社で、全国にいくつかの同名の神社が存在します。子授け安産系の神社は水天宮のようにそれ専門のように受け取られている神社が多いです。子安神社も子授けや安産の神社ですが、水天宮に比べると、それ一色の度合いは少なそうです。縦長の境内には様々な堂宇があり、子授けや安産の神社という側面と、地域の鎮守としての側面があるようです。

境内に入ると左側に神楽社があります。6月下旬に訪れたので、夏越の大祓の準備なのか、茅の輪が神楽殿に置いてありました。子安神社は八王子の鎮守様で、毎月のように地域の方が集まる神事を開催しています。中でも3月に行われる「八王子きつね祭り」は、一風変わった珍しいお祭りです。どこにでもある稲荷社ですが、子安神社の境内にもあります。稲荷社の初午祭はあちこちで行われていますが、八王子では初午祭の日に子どもが稲荷神を祀っている稲荷社に行くと、お菓子がもらえるという風習があったそうです。稲荷社は神社だけでなく、個人や商店の敷地などにもありますから、この日は子どもたちがお菓子目当てに街中を駆け回っていたそうです。この風習が形を変えて、子どもたちが狐のお面を被ったり、きつねのお化粧をしたりして、町中を練り歩くという行事を行っています。

こちらが手水舎です。手水舎の奥側に「安産祈願」「安産御礼」と書かれていますが、子安神社では安産祈願として底の抜けた柄杓を奉納し、安産御礼として底のある柄杓を奉納するという風習があります。底の抜けた柄杓を奉納するのは、柄杓を母体に見立てて、水が抜け落ちるような安産でありますようにとの願いが込められています。

こちらは祖霊舎です。氏子先祖の霊と、戦没者を祀っています。ちょうど裏側に御神池があって、湿気と同時に清い空気感が感じられます。

こちらは境内社厳島神社です。御神池とセットになっているものと思われます。市杵島姫命がお祀りされている、いわゆる弁天様で「船森弁天」と呼ばれていたそうです。船森というのは、かつて源義家が奥州へ向かう際、この地で戦勝を祈願して欅を船の形に植樹し、やがては欅の森になったということから、このあたりが船森という地名になったそうです。現在は別の地名になりましたが、周辺施設に船森という名前が残っています。

御神池です。完全に作られた池ですが、真ん中の島状の岩に祠がありました。昔はもう少し自然な池の様相だったと思います。「湧き出づる清水も産みの安らかに」という山口誓子の句碑が建っていました。立派な鯉が泳いでいて、鯉の餌も売っていました。

本殿を正面に見て、左右に小さな祠が建っています。こちらは左側で、橘社です。子安神社を創建した橘右京少輔を祀っています。

右側が木花咲耶姫命を祀っている神水殿です。木花咲耶姫命は本殿の御祭神なので、こちらの祠は、儀式のための祠のような感じです。どんな儀式かというと、先程、手水舎の奥に奉納されていました柄杓で、ここに湧き出ている御神水をすくうという儀式です。救った柄杓はそのままここに奉納します。祠の中には木花咲耶姫命の像が安置されています。仏像は珍しくないですが、神様の像は結構珍しいです。真正面から大写しにするのも憚られ、祠の柱の隙間からちらっと見える程度に撮影しました。

お参りをしようと拝殿に上がると、ちょうど昇殿参拝をしている方がいました。どんなご祈願なのかはわかりませんが、巫女さんが鈴を振って舞を奉納していました。子安神社の御祭神は、木花咲耶姫命です。これは創建の由緒にもある通り、時の天皇の后の安産を願うためにお祀りしたものです。

木花咲耶姫命は山の神様である大山祇神(おおやまつみのかみ)の子で、「天孫降臨」神話に登場する邇邇芸命(ににぎのみこと)に嫁いでその子を産みました。邇邇芸命は天の神を司る天照大御神(あまてらすおおみかみ)の孫なので、天孫と言います。地の神を司る大国主命(おおくにぬしのみこと)の「国譲り」神話によって譲られた地上を支配するために、天から邇邇芸命が降臨します。一夜で身ごもった木花咲耶姫は、その子が邇邇芸命の子ではないという疑いを晴らすために、火を放った産屋の中で子を産みます。そのような状況でも無事に子を生んだことから、お産の神様として祀られるようになったのです。木花咲耶姫が生んだ子の孫が、初代天皇神武天皇です。

相殿には天照大御神素戔嗚命(すさのおのみこと)と、奇稲田姫命(くしなだひめのみこと)と、大山咋命(おおやまくいのみこと)がお祀りされています。素戔嗚命奇稲田姫命は夫婦神なので、一緒に祀られていると、夫婦や家庭の幸福にご神徳がある神社が多いです。

こちらは歯固め石を奉納する場所です。歯固め石というのは生後百日のお祝いで行われるお食い初めの儀式と共に行われる歯固めの儀式で使われる石です。石のように固くて丈夫な歯になりますようにと願いを込めて行われる儀式で、出産後のお宮参りの時に神社で購入したり、境内の石を拾ったり、お食い初めの料理とセットになっていたりするものです。使い終わったら大事に取っておいても良さそうですが、子安神社には納める場所がありますので、境内の奥にある白山神社にお参りしてから、こちらの場所に納めると良いでしょう。

金刀比羅神社の提灯があります。この奥に末社エリアがあります。味のある屋敷下の通路を通って進みます。

新たに手水舎があります。コロナ感染対策のために柄杓を撤去しています、という紙が置いてあります。

こちらには長屋風の社殿に末社5社がご安置されています。よく見てみると、それぞれお供えされているものが違っています。説明書きがによると、一番手前にあるのが石神社で、しゃもじがお供えされています。お祭りされているのは少彦名命(すくなひこなのみこと)です。病気平癒の神としてよく登場しますが、こちらでは咳止めの神とされています。そのお隣が歯の神様の白山神社で、白山比咩命(しらやまひめのみこと)をお祀りしています。梨か絵馬を奉納するそうです。真ん中が稲荷神社で、保食神(うけもちのかみ)をお祀りしています。稲荷神なので、油揚げをお供えするそうです。その隣は御嶽神社国常立尊(くにとこたちのみこと)をお祀りしています。眼病の神で絵馬を奉納するそうです。最後が第六天神社で面足尊(おもだるのみこと)と惶根尊(かしこねのみこと)をお祀りしています。足腰の神様で、杖や履物を納めるそうです。

長屋風の五社の正面に葦船社があります。一見して分かりましたが、水子の霊をお祀りしているところです。いくら子授けや安産の神様と言っても、やはり不幸にも生まれる前に亡くなってしまう命があるのでしょう。子どもが欲しい人が子を授かり、無事に生まれるように祈願するだけではなく、生まれる前に子どもを亡くしてしまった人のために、このような拠り所となる神様をお祀りしていることは、大事なことだと思いました。葦船社にお祀りされているのは、イザナギイザナミが最初に産んだ神の日留子命(ひるこのみこと)です。日留子命は産まれたものの「良くあらず」ということで、葦の船に乗せられ幽世に流されたということです。

こちらが金刀比羅神社の社殿です金刀比羅神社香川県琴平町にある有名な金刀比羅宮を本社とする神社で、大物主命をお祀りしています。海運や船関係の商売などのご神徳が知られています。大物主命は古事記日本書紀で扱いが違っていて、神社によって解釈が分かれる神様です。子安神社では扁額に思いっきり掲げられているので、大物主命=大黒様=大国主命という解釈なのでしょう。

私は八王子市民ではありませんが、八王子市民の知人に聞くと、やはり子安神社は市の中心地に近いこともあって、毎年初詣に訪れるなど親しみやすい神社とのこと。1000年以上に渡って八王子の人々が祈りを繋いできた神社なので、そこに行くだけで何かを頂いた気分になります。これがパワースポットという場所なのでしょう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

ランキング参加中(よろしくお願いします)

にほんブログ村 歴史ブログ 史跡・神社仏閣へ
にほんブログ村

神社・仏閣ランキング
神社・仏閣ランキング