寺社探訪

寺社探訪とコラム

「三社祭に行く」

お葬式の仕事をしていると、地域密着型の人生を歩んだ人のご葬儀に関わることがあります。中でも、お祭りが大好きというか、生き甲斐のようになっている人がいて、棺の中に半纏や帯、鉢巻きが納められているのを見ると、コロナのせいで、生き甲斐にしていたお祭りを自粛したまま亡くなられたのかと、他人事ながらとても残念に思います。

東京のお祭りはコロナ騒動が始まって以来、ずーっと中止が続いていますが、今年から地方では大きなお祭りも、感染対策の工夫をして、なんとか再開しているのを見かけます。先日は知人から、長野県の諏訪大社御柱を見に行ったお土産話を聞きました。私は混雑が苦手なのと、興奮して激情している人を見るのが嫌いなので、決してお祭り好きではないのですが、伝統文化そのものはとても好きなのです。

日本三大祭やら江戸三大祭やら、3つひと括りにする習慣がありますが、東京でお祭りといえばやはり三社祭です。コロナ以来、多くの東京のお祭りは「神職が神事のみ行います」という、いわゆる自粛状態が続いています。そこへ、東京の祭りの代表格、三社祭がついに重い腰を上げました。いや、ついにお神輿を担ぎました。

こちらは神輿が保管されていた神輿庫です。一之宮、二之宮、三之宮、全て出払っています。という訳で、浅草へやってまいりました。朝から用事で港区にいたので、雰囲気だけ感じようと、帰りに足を延ばしてみました。浅草に着いたのは16時を過ぎた頃で、駅や雷門の周りはかなりの人出でした。いつもこうなのか、お祭りだからなのか、よくわかりませんが、とにかくすごい人です。仲見世を通るのはやめて、隣の商店街を抜けて浅草神社に直行します。途中で「五体不満足」の著者の乙武さんがいて、声をかけて来た全ての人々と写真撮影をしていました。無所属で出馬するというのは本気みたいですね。

さて、それでは、ずっと自粛状態だった三社祭が今年はどうなったと言いますと、やはり話題になったのは、お御輿を担ぐことです。各町会のお神輿が浅草神社境内に集合し、お祓いを受けて各町を渡御する「町内神輿連合渡御」は中止のままですが、浅草神社の宮神輿による、「宮出し」「本社神輿各町渡御」「宮入り」が行われます。行われますと言っても、通常通りではなく、浅草神社の本殿から、鳥居を通って二天門前までの僅かな区間だけで、各町への渡御は台車に載せて行うというものです。神輿を担ぐ人も、予め選抜された各町の担ぎ手さんたちが担ぐことになっています。これでも3年ぶりのことですし、東京都の大きなお祭りではコロナ騒動以来初のことなのです。

混雑が苦手で、早くも帰りたい欲に負けそうになりますが、境内では神楽殿の前で太鼓の演奏が見られました。たまにお葬式の仕事でもお囃子連の皆さんの演奏を聞くことがありますが、境内で演奏されていたのは、お囃子というより芸術レベルのすごい太鼓でした。この段階でも本社の宮神輿はどこかの町内を曳かれているはずで、多くの方々が沿道に集まっているのだと思われます。よくTVニュースで見たのは、人が埋め尽くす雷門前を通過する映像ですが、わざわざ混雑に突入する気にもなれず、境内で何か行われないかなとお祭りムードを味わいながら座っていました。

17時半頃から神楽殿雅楽が奏上され始め、いよいよ宮入りかと人が続々と集まり始めました。空にはヘリも飛んでいます。おそらくこの神楽をバックに神輿の宮入が行われるのかなと想像していると、神楽が終わって、楽人たちが下がってしまいました。

宮入りの予定は18時とのことで、できれば見学して帰ろうかと待っていましたが、境内は特に何もなく、人の密度がどんどん上がっていくのみです。中には半纏姿の人々も見受けられました。中央の参道を空けて、両側は待ち構える人で埋まっています。すると、隣りにいたご老人が、例年だと境内はお祭り関係者のみで、一般客は境内の外に出される、ということを言っていました。確かに、過去の三社祭の映像を思い返すと、浅草神社境内にいると怪我するくらい激しい感じだったような・・・全身入れ墨の何人もの人が神輿に乗ってぐちゃぐちゃにもみ合い、あちこちで喧嘩が勃発し、警察も入り乱れ怒号が飛び交うというのが三社祭の印象です。あまりに強烈なので一度中止になり、暴力的要素を見せないようにして、再開された歴史があったことが思い出されます。

しばらくすると、拡声器を持った人が現れて、ここでお神輿の見物はできません。皆さん外に出てもらいます。と、やや不躾にアナウンスして回っていました。バリケードの外からの見物になります。とのこと。確かに、バリケードらしきものが境内の隅に寄せられていて、使わないのかな? と、不思議に思っていました。と、いうことは、まだバリケードを出す段階でもないということなのかな? と知らない祭りの進行を想像しつつ、境内から出て二天門の前辺りに陣取ります。

そこへ「ここに神輿が通るのは20時半から21時位」との絶望情報が届きます。やはり、かなり遅れている様子。既に帰りたい気持ちになっていたので、即決でこの場を離れることにしました。この場にいるのは三社祭と共に生きてきた浅草の人々と、お祭りを見物する人々。私は見物人にもなれず退散ですが、お祭りが復活するという人々の期待や喜びが、空気に混ざって漂っているのを感じることができました。

さてさて、その後は私は電車の中でしたが、雨が降ってきたようで、現地で粘っていたとしても、そのうち心折れていたでしょうから、帰って正解だったと思いました。宮入りは結局22時頃だったそうですが、多くの方々が見守る中、大いに盛り上がったようですね。過去の三社祭の様子を映像で見ると、今回私が見たものは全然人の数が違っていて、復活とは言えないような状態ですが、難しい条件の中、お祭りを実行するために多くの方々が関わり、知恵を絞って準備してきたことだと思います。私の住む地域でも、今年も神社のお祭でのお神輿は中止でした。三社祭の後、特にお祭り原因の大きな感染拡大情報などはありません。すべてが上手く行って反省点が無いなんてことはないと思いますが、東京を代表する三社祭でお御輿を担いだことが、東京中のお祭り好きの皆さんの希望となるのではないかと思います。

 

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