寺社探訪

寺社探訪とコラム

「葬祭ディレクター試験」

葬儀の仕事は無資格で開業できますが、それでも業界の健全化と発展のために、業界団体による資格が設けられています。たくさんの資格があるのですが、最もポピュラーなのは「葬祭ディレクター試験」という、葬儀社や互助会の加盟団体が主催している資格です。年に1度、毎年9月頃に実施されているのですが、昨年はコロナ蔓延防止のために延期となり、今月に実施されることとなりました。

私の周辺で働いている方々は、この葬祭ディレクター試験を受験している方が多くて、ベテランの方は大体取得していて、新人の方は取得要件(実務経験)を満たした方から受験しています。今回も数名の知人が受験することになっていて、試験対策をしているのを見かけました。私自身は遥か昔に取得したのですが、かなりのプレッシャーをかけられたので、昨日のことのように思い出します。これから受験しようという方のために、私や私の周辺の方々の経験をお話しできればと思います。

 

この資格は、葬儀社によっては受験費用を会社が支払う形で、取得を推奨していることが結構見受けられます。とある葬儀社で、壁一面に社員たちの資格認定証が飾られているのを見たことがあります。試験会場でも、同じ制服を着た集団がいたりします。私も当時所属していた会社が受験費用を出してくれましたが、不合格なら自腹という条件でした。9月試験ですが、申し込みは4月~5月あたりで、申し込んでから本番までは4ヶ月以上あります。対策期間としては充分すぎるほどある感じです。個人差があると思いますが、対策期間は、試験日から逆算して1~2か月あれば、大丈夫だと思います。

受験科目は、筆記と実技があり、実技試験には「司会」「接遇」「実技筆記」「幕張」があります。1級と2級がありますが、試験科目は同じで、難易度や試験範囲に差があります。受験に必要な実務経験にも差があって、1級で5年、2級で2年必要です。私の感覚だと、実務経験を満たしているなら、2級を受けるより1級を受けた方が良いと思います。受験費用がそこそこ高額なのと、試験科目が同じなので、どうせやるなら一発で1級を取った方がお得感があります。合格率は1級で60~70%、2級で75%程度なので、油断してたら落ちるという程度でしょうか。

 

さて、それではどのように試験対策をするのかについてお話しましょう。筆記試験については、過去問を数年分やって間違えたところを見直していれば、合格点は獲得できるようになると思います。テキストとして「葬儀概論」がありますが、これを一読してもいいとは思いますが、かなり時間がかかるので、試験対策に入る前の段階で、サラッと読んでおくか、読まないでも大丈夫だと思います。過去問で間違えたり理解が難しいと思った部分を読むという使い方でも充分と思います。

問題は実技試験です。受験料も筆記と実技に分かれていて、実技の方が高くて、科目数も多いです。実技を落としてしまうと、翌年また受験する際に高い受験料を支払うことになります。学科試験に合格していたら、2年間学科試験免除になるので、受験しないと損な気になりますが、実際には実技試験料を支払うので、なんとか一発で合格したいものです。実技試験の対策としては「出来るようになるまで繰り返し練習する」以外に方法はないと思います。幕張試験は制限時間が厳しいので、効率をとことんまで突き詰めて、発明や発見を繰り返して完成度を上げていきます。自分なりの壁が出てくると思いますが、負けずに挑戦し続けていると、ふとした瞬間に道がひらけます。2~3週間毎日練習すれば、できるようになっていると思います。ただ、葬儀の仕事の現場で、実際にこんなスピードで幕張をやらされることはありませんけど。

 

では、試験当日に私が経験した話をしてみると、とにかく待ち時間が長かったです。朝9時から夕方17時までの試験ですが、実際に試験を受けている時間は合計すると2時間もありません。試験と試験の間に膨大な待ち時間がありますので、時間の使い方を考えていた方が良いと思います。空き時間に過ごせる大きな待合室があったのですが、複数人で受験している場合は、そこで仲間と情報交換ができます。私は同業者がうじゃうじゃ集まっている空間が嫌で、空き時間はほぼ外出していました。公園や喫茶店で試験対策をしながら過ごしました。

試験内容では、幕張試験のテーブルの置き方が良くなくて、隣の人とぶつかって幕張を進められず、途中でテーブルを担いで移動するというアクシデントがありました。試験はグループごとに進められますが、私のグループは最初に幕張試験だったので、このようなアクシデントが起こることを運営側が認知していなかったのだと思います。2回目以降はテーブルの向きが、ぶつからないように変更されていました。このような突発的な不利もあります。私は幕張試験の練習段階では、半分張り終わったところで残り時間を確認し、早ければ残りは丁寧に、遅ければ残りは急いで、という練習をしていました。本番で半分終わったところで自分のストップウォッチを見たら、0分00秒……すごい速さ……ではなく、ボタンを押すのをミスってしまっていました。これでは、残り何分何秒なのかわからず、試験会場の中で最速で仕上げて、手直しもできずに棒立ちしていました。大きなミスですね。他には、司会試験で読めない漢字がありました。これは減点されたと思いますが、これだけで不合格にはならないはずなので、落ち着いて行いました。それよりも、司会試験が一斉に行われるので、会場内がうるさくて自分の声も聞こえないほどになるというのが予想外でした。

とにかく長くて疲れたという印象でしたが、合格したときは嬉しかったです。当時の私の職場では、私が最初に受験して、翌年から大勢が受験するようになったので、みんなの期待と関心というか、プレッシャーが半端なかったのです。合格したからと言って、何か特別な良いことはありませんが、しばらく名刺に記載していたので、私の知らないところで良いことがあったのかも知れません。

お客様目線でいうと、資格は技術と知識の一部を審査しただけで、葬儀社の社員として大事なことは他にもたくさんありますから、資格を持っているから優秀だということにはならないと思います。性格や人間性など、審査されていませんからね。それでも、5年の経験を持つ葬儀社の社員が60~70%合格する試験をクリアした人なんだな、ということがわかります。

この資格以外にも、葬儀業界にはたくさんの資格がありますが、どれも受験費が結構高めです。私が思うには、葬儀そのものの資格よりも、周辺の知識や役立つ資格を持っていると、良いかなぁと思います。税務や法務、色彩やデザインの資格など、差別化がはっきりして有効なのではないかと思います。いずれにしても、資格を得ようとすることが向上心の証明ですから、挑戦することは良いことだと思います。

 

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