寺社探訪

寺社探訪とコラム

浄土宗 増上寺 2

前回は徳川家墓所までリポートしました。更に奥へと進んで歩いていきたいと思います。徳川家墓所から更に奥へ進んで、大殿の裏辺りに大納骨堂があります。現代社会では、家族がいても、いつ一人暮らしになるかわかりません。少子化核家族化、未婚や離婚の増加で、自分の供養をしてくれる人がいない人も少なくないと思います。そんな人のための納骨堂が増上寺にはあります。f:id:salicat:20210528202012j:plainむしろ、ここは菩提寺もなく後継者もいない人でないと入れません。納骨堂の右側に戒名と俗名が小さく書かれたプレート式の墓標がありました。合祀墓で一度納めたら戻すことはできませんが、後を見てくれる人がいなくても、毎日大勢の観光客が増上寺にお参りしていて寂しくないですし、増上寺の僧侶たちが懇ろに供養してくれます。ひとりで生きていて、お墓どうしようなんて人は一考の余地ありです。ちなみに、東京タワー直下の港区の一等地、浄土宗大本山に眠る費用は50万円とのことです。f:id:salicat:20210528202913j:plain貞恭庵という茶室があります。この貞恭というのが皇女和宮法号だそうですが、実際に和宮がここを利用したとか、そういうことはわかりませんが、ゆかりの茶室ということになっています。f:id:salicat:20210528202333j:plain更に進むと圓光大師堂があります。圓光大師堂は2009年竣工と、増上寺の中でも新しい建物です。宗祖法然の墓の砂が安置されているそうです。そんなものまで…と思ってしまいますが、増上寺的には、このことで宗祖法然が初めて増上寺にやってきた、と考えるそうです。だからお堂まで建てて安置するのです。f:id:salicat:20210528202427j:plain大殿の左側まで戻って来ると、光摂殿があります。ここは私のような葬儀業界で働く者にとっては、大型葬儀用の式場というイメージで、私も何度かここで働いたことがあります。葬儀に利用するのは1階だけなので、その上にあるものを全く気にしないで今まで過ごしてしまいました。光摂殿は2000年に建てられたものなので、かなり新しいです。3階の大広間の天井絵が有名だそうで、120名の日本画家による四季の草花が描かれています。いつでも拝観できるのではなく、毎年秋の「港区まつり」で特別公開されているそうです。f:id:salicat:20210528202607j:plain黒門から境内に入って左側に開山堂があり、慈雲閣と呼ばれています。こちらも光摂殿と同じで1階がホールになっていて、何度か葬儀の仕事で訪れたことがあります。戦火で焼失したものを1989年に再建とありますので、こちらも新しい建物です。例によって私は葬儀でしか訪れたことがないのですが、2階の開山堂には開祖の聖聰上人像が安置されています。f:id:salicat:20210528202525j:plain慈雲閣と光摂殿の間にあるのが経蔵です。経蔵は逆に戦火を生き抜いた建物で、都の重要文化財に指定されています。家康が寄進した宋、元、高麗版の大蔵経が収蔵されていて、こちらは国の重要文化財に指定されています。経蔵の中心にある八角形の輪蔵は今でもちゃんとくるくる回せるそうです。4月の宗祖法然の御忌大会に一般公開されます。f:id:salicat:20210528202715j:plain境内の中央部に再びやって来ました。鐘楼堂を見学します。鐘楼堂自体は空襲で焼失し、戦後再建されたものです。梵鐘は高さ一丈(3m)、重さ4千貫(15トン)という大きさです。寛永寺浅草寺の梵鐘と共に江戸三大名鐘のひとつとなっています。f:id:salicat:20210528202746j:plain今でも日本人は神も仏もはっきり区別しないで生きていると思いますが、江戸の世の中は神仏習合の世の中で、家康も神と仏の合体神である権現として崇められています。そんな感じで神社と寺院はセットになっていることが多いです。大きなお寺だと境内に神社があります。増上寺の境内には熊野神社があります。熊野神社の本社は、和歌山県熊野三山です。山や川、石や樹木、トイレにも神様が宿ると信じ、手を合わせて頭を垂れる日本人の宗教観だと、神様仏様に区別なんてないのかも知れません。みんな有り難く畏れ多い存在なのでしょう。f:id:salicat:20210528202256j:plain増上寺を訪れ、調べてみて感じたのは、増上寺は行事がすごく多いです。檀家さんや、信者さんが参加できるものも多いですが、浄土宗の大本山として、各地より僧侶が集い宗派の大きな行事を執り行うことも多いです。たくさんの僧侶が列を組んでいるのを見ると、それだけで有り難い気持ちになります。港区ということで、東京タワーが見下ろす先端的な都会の街の風景の中で、日々粛々と仏事が執り行われているというのも、今を生きている人の営みが感じられて面白いです。

 

名称:三縁山 広度院 増上寺

住所:東京都港区芝公園4-7-35

創建:明徳4年(1393年)

開祖:聖聰

宗派:浄土宗

寺格大本山

本尊阿弥陀如来

メモ:徳川家の菩提寺(15代のうち6名)